ブランドの信頼を築くために重要なビジュアル表現

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先日、ゲッティイメージズが発表したVisual GPSの調査結果で、東南アジアの消費者の購買意思決定を促す主な要因が明らかになりました。調査では、東南アジアに住む人々にとってサステナビリティが非常に重要であることが示されたものの、4分の3近くの人々は環境よりも利便性を優先していることが明らかになっています。これは、他の主要な地域に比べて、はるかに高い統計結果です。

新型コロナウィルスの感染拡大の以前と真っ只中で、東南アジアの消費者にとっての重要な関心事は、広告における真実性とリアルさであることから変わっていません。ブランドが人々の真のライフスタイルや文化を捉え、虚飾のない情報発信を行うことは、引き続き重要であるようです。

ゲッティイメージズでアジア太平洋地域のクリエイティブインサイト部門を統括するケイト・ロークは次のように説明しています。「ブランドにとって、リアルさとインクルージョンを適切に取り入れることが、人々を取り巻く“ニューノーマル”において非常に大切です」

「そんな中でブランドの信頼を確立するには、ビジュアル表現を通じた真実性、寛容性、透明性が鍵となります。重要なのは、ビジュアルを選ぶときにインクルージョンの必要性を忘れないようにすること。人々が求め期待しているのは、自分自身や自分の周りにある世界を代弁するビジュアルです」

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「興味深いことに、テクノロジーに対する消費者の感情が変化していないこともわかりました。東南アジアだけでなく世界的に見ても、テクノロジーが変化に富む緊張感を大いに生み出していると言って間違いありません。多くの消費者が望む利便性をテクノロジーはもたらしてくれますが、個人情報やサイバーセキュリティに対する懸念もあります」

「 日本の消費者の48%は『モバイル端末を持っていることで大切な人とのつながりを感じることができる』と答えている一方で、80%が『自分の国で大規模なサイバー攻撃が起こる』と考えています」

このようにロークがThe Drumに語ったのは、Visual GPSの発足後のことです。Visual GPSでは、世界26カ国の1万人を超える消費者と専門家を対象にYouGovと共同で調査を行い、2020年に購買意思決定の原動力となる4つの“フォース”を特定しました。それは、ウェルネス、リアリティ、テクノロジー、サステナビリティです。

調査により、新型コロナウィルスの流行以前と流行中で“diversity(ダイバーシティ、多様性)”に関する検索が375%増加し、“Asian Business Woman(アジアのビジネスウーマン)”は269%増加したことがわかりました。タイでは“LGBT”が230%増加しています。

調査の対象になった人の実に88%が、民族、生活環境、見た目などの多様性が不十分であるとし、企業に対して東南アジアのライフスタイルや文化をもっと適切にとらえることを期待していると述べています。また、68%の人は差別されたことがあると答え、直面したことのある主な差別の形態として、体型を挙げています。

また、ゲッティイメージズのウェブサイトでは、在宅勤務に関する検索が4,200%増加し、オンラインショッピングは981%、オンライン学習は1,500%増加しています。東南アジア全域で新たに登場した重要な検索キーワードとして、“Telecommuting(在宅勤務)”と“virtual meeting(ウェブ会議)”があります。

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ロックダウンが始まってから“Together(一緒に)”、“Joy(喜び)”、“Wellness(ウェルネス、健やかさ)”といった検索キーワードは、それぞれ1,500%、900%、235%増加しているほか、“Home Workout(自宅での運動)”や“Positive Thinking(前向きな思考)”も増加しています。このことから、東南アジアにおけるウェルネスの重要性が反映されており、ウェルネスをどのようにビジュアルで表現しようとしているのかがうかがえます。

これらを踏まえた上で、人々の新たなつながり方を可視化すること、そしてテクノロジーの人間化要素が鍵となります。また、ライフスタイル、産業、教育、ビジネスなどのコンテンツでアプリやスマート製品を利用する光景を取り入れ、日常生活で役立つものとしてテクノロジーを表現することも重要です。

心に響くビジュアルを選ぶためには、まず消費者を知ることから始めなければなりません。「 消費者のライフスタイルを刺激しているのは、どんな価値観や問題なのか?」と考えてみましょう。

ロークは次のように話します。「Visual GPSからもわかるように、消費者にとって大切なのは、関連性を見出せるかどうかです。東南アジアの人々は、あらゆる面で多様性を期待しており、それを踏まえてリアルなライフスタイルと文化を描くことをブランドに求めています。そうした個人レベルで心に響くビジュアルを選ぶことで、消費者にとって魅力的なコンテンツを作成できます」

「ブランドのコミュニケーションにおいて透明性を保つことは、消費者にとって非常に重要です。東南アジアでは10人に8人が、製品の作られる様子や背景を知りたがっています。透明性を保つ方法の1つは、ブランドのことを知ってもらえるような情報発信を行うことです。ブランドの方針をどのように展開しているのか、どのように製品を作っているのか、どのように従業員と仕事をしているのかといった情報を消費者に見せてあげるのです。隠そうとするのではなく、ビジネスの動きをイメージしてもらえるようにすることで、より高いエンゲージメントと信頼が生まれます」

「 データに基づくこうした情報があれば、どのようなビジュアルが消費者の心に響くのかを理解したうえで、効果的なビジュアル戦略を構築し、ビジュアルを使ったブランディングやコンテンツ選びを展開することができます」

最後に、世界の他の地域に比べて東南アジアでは、サステナビリティのトレンドが強く見受けられることも認識しておく必要があります。東南アジアでは、年齢、国、文化を問わず、サステナビリティが消費者にとって重要であることがわかっています。調査の結果では、二酸化炭素排出量の削減を可能な限り取り組んでいるという人が84%となっているほか、10人中8人が環境に優しいブランドの製品しか買わないという述べています。

しかし、環境に対する人々の思いが強く示されている一方で、サステナビリティをめぐる意識と実際の行動は必ずしも一致していないこともわかっています。

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ロークは次のように話します。「東南アジアでは、85%の人が自分自身を環境に優しいとみなしていながら、70%の人が環境よりも利便性を優先していると答えています。この数字は、世界の他地域の46%を大きく上回っています」

「この矛盾した状況は世界中で見受けられますが、特に東南アジアではその傾向が強いようです。これはブランドにとって、東南アジア独自のチャンスだと言えるでしょう。消費者の意識と実際の行動のギャップを埋めるために、この問題をありのままにビジュアルで表現する好機が与えられているのです」

さらに詳しい情報については、Visual GPSをご覧ください。

※この記事は、ショーン・リム(Shawn Lim)がAdweekで執筆しました。パブリッシャーネットワークを行うIndustry Driveを通じてライセンスされています。ライセンスに関するご質問は、legal@industrydive.comへ直接ご連絡ください。

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